iPS細胞と倫理観

iPS細胞と倫理観

iPS細胞と言えば、2012年、山中伸弥教授が発明したこで、大きな話題になり、神経や心臓などの色んな細胞に変化できる能力があります。
幹細胞の一種ですが、iPS細胞は同じ幹細胞のES細胞と比べると、生命倫理上の問題が少ないことで評価されています。
ES細胞は、人の胚盤胞の内部から取り出した細胞を培養して作製するので、再生医療への応用が期待されていますが、iPS細胞と違い、倫理上の問題が懸念されます。
ES細胞は、他人の細胞から作製するので、拒絶反応が心配されますが、iPS細胞にはその心配がありません。
そうしたことから、iPS細胞は、医学の広い領域で、応用されることが期待されているわけです。
人の細胞から卵子と精子を作製できるのがiPS細胞なので、これにより、不妊治療に効果的とされています。
問題となるのは、自分が知らないうちに皮膚を採取され、iPS細胞によって、自分と同じ遺伝子を持つクローンが誕生させられることです。
倫理的問題や拒絶反応のない細胞移植療法の実現が期待されているのがiPS細胞ですが、本当に倫理的問題が克服されたとは言い切れません。

iPS細胞を語る場合、クローンES細胞の倫理的問題と比較しながら、倫理的問題を解消していく必要があります。
これからiPS細胞を推進していくには、生命倫理専門調査会などの倫理的問題を検討しなければなりません。
ES細胞と比べると、iPS細胞は、素材の点でも、技術の点でも、容易であることは明白です。
ES細胞は卵子や胚を入手する必要がありますが、iPS細胞は、成人の皮膚細胞などでよいので、素材が簡単に入手できます。
技術面でも、iPS細胞の場合、分子細胞生物学の基本的な技術を有する人なら、だれでも作ることができます。
ただ、こうしたメリットがあるiPS細胞は、研究規制を敷かなければ、悪用される恐れがあるのは事実です。